後方支援病院に断られるときMSWは何を確認する?医療方針の行き違いを経験した転院調整

転院を申し込んでも受け入れ先が決まらないと、次は何を変えればよいのか焦ると思います。

ただし、断られた理由を確認せず、資料を増やしたり家族に同意を求め直したりしても、調整が進むとは限りません。

私は急変時の対応に関する意向が紹介先で変わり、受入れを断られた経験があります。

改めて話を聞いて追加情報を伝えましたが、それでも受入れにはつながりませんでした。

この経験をもとに、患者本人の意向と病院の対応能力をどう確認し、チームで次の方針を考えるかを整理します。

この記事を書いた人
くに丸

社会福祉士・ケアマネージャー。医療ソーシャルワーカー、支援相談員として計11年にわたり医療・福祉の最前線で相談援助業務に従事。退院支援から介護施設の入所調整、介護保険の活用まで、これまで数多くのご家族の悩みを解決してきました。現場で培ったリアルな経験と専門知識をもとに、本当に役立つ正しい情報をわかりやすくお届けします。

後方支援病院に断られた理由をMSWの伝え方だけにしない

受入れの判断には、患者の状態、必要な医療、病床や人員の状況、病院の機能などが関わります。

まず、情報不足で判断できないのか、現在の体制では対応できないのかを分けて確認する必要があります。

追加資料で再検討できるのかを聞く

何が分かれば判断できるか、どの情報が不足しているかを紹介先に確認します。

ADLや医療行為、入院中の経過、本人の意向などを整理し、医学的な内容は看護師や主治医と確認して共有してください。

一方、対応できる医療の範囲と合わない場合は、同じ情報を繰り返し送るだけでは解決しないことがあります。

後方支援病院という呼び方だけで受入条件を決めつけない

療養病棟や回復期など、転院先として検討する病院にも異なる役割があります。

病院の名称や病棟の区分だけで、必要な処置や急変時の対応が可能と考えず、個別に確認してください。

断られたことだけから、患者の価値や担当MSWの能力を評価する必要もありません。

急変時の希望を理由に転院を断られた私の経験

私が相談した療養病院では、受入れにあたり急変時の対応方針を確認していました。

家族に説明したうえで申込みを進めましたが、紹介先との面談で希望が変わり、調整が止まりました。

家族が心肺蘇生を希望し受入れ困難と言われた

当初の説明ではDNARの方針を家族が了承したと捉えていましたが、紹介先で説明を聞いた際、心停止時には心臓マッサージをしてほしいという希望が出ました。

紹介先からは、その希望には対応が難しく、受入れ困難であると説明されました。

これはその病院との調整で経験したことです。

療養病院では必ずDNARが必要、心肺蘇生を希望する人はどこにも入れない、という一般的な条件として伝えるものではありません。

再度の意向確認でも受入れにはつながらなかった

私は家族と改めて面談し、その後に確認できた意向を紹介先に伝えました。

しかし、入院後に再び希望が変わった場合の対応が難しいという理由で、再検討しても受入れには至りませんでした。

この経験から、同意の有無だけでなく、本人や家族が何を理解し、何を心配し、病院がどこまで対応できるかの共有が必要だと考えています。

なお、この経過だけでは当時の判断の適否や、患者本人の意思確認の十分さまでは評価できません。

MSWの転院調整ではDNARと治療全体を混同しない

ここは、私の経験談とは分けて確認しておきたい医学的・倫理的な原則です。

受入れ先を探すために、DNARを治療をしないという意味に広げたり、同意を得ること自体を調整の目標にしたりしないことが大切です。

DNARは心停止時の心肺蘇生に関する指示

日本集中治療医学会の勧告では、DNAR指示は心停止時に限るものとされ、ほかの通常の医療や看護を自動的に差し控えたり中止したりしないよう示されています。

輸液や栄養、抗菌薬などの方針を、DNARの一言でまとめて決めることはできません。

具体的な医学的説明と方針の確認は主治医などの医療チームにつなぎ、MSWだけで適応や治療内容を決めないようにしてください。

出典:日本集中治療医学会

本人の意思を軸に繰り返し話し合う

厚生労働省のガイドラインでは、十分な説明と話し合いを踏まえた本人の意思決定を基本とし、意思は変わり得ることも前提にしています。

本人が意思を伝えられるか、支援すれば表明できるかを確認し、家族の希望だけで置き換えないようにします。

受入れのために希望を変えるよう圧力をかけるのではなく、選択肢と対応できる医療の違いをチームで説明してください。

出典:厚生労働省

後方支援病院へ打診する前にMSWが共有したい情報

私はADLと必要な医療、緊急時にどこまでの医療を希望しているかを確認していました。

ただし、家族と話したこと、本人の意思、医師が説明した内容は、同じ情報として扱わず整理する必要があります。

  • 日常生活で必要な介助と見守り
  • 実施中の医療行為と頻度
  • 今後必要と見込まれる医療
  • 本人の希望と確認した時期
  • 家族が理解している内容と残る疑問
  • 紹介先で対応可能か確認したい事項

未確認のことを未確認のまま伝える

家族は納得しているようだったという印象だけで、方針が合意されていると記載しないようにします。

説明した人、話し合った内容、残っている迷いを分けて伝えると、紹介先も再確認すべき点を把握しやすくなります。

医療方針の判断が必要なら、MSW同士の電話だけで完結させず、医師間など適切な確認につなげてください。

転院先が見つからないときはMSW一人で抱えない

私も受入れ先がない状況や家族の希望、調整の進捗を上司に相談し、難しいケースでは主治医にも説明を依頼していました。

説明では、患者や家族に妥協を迫るより、何が合わず、ほかにどんな方法を検討できるかを具体化することが必要です。

主治医と病棟で療養上の必要性を共有する

現在必要な治療、療養場所の候補、各候補で可能な対応を医療チームで確認します。

転院の必要性や時期の説明を、病院の期限だからという一言で済ませず、医学的な状態と生活上の課題に分けて行ってください。

意見がまとまらない場合は、院内の倫理相談など、組織の検討手順につなぐことも考えられます。

断られた理由と次の確認事項を記録する

相談先、受けた説明、追加資料の要否、次に相談する相手を残すと、チームで対応を検討しやすくなります。

同意を取り直せば必ず受け入れてもらえると家族に約束しないことも大切です。

転院先探しと意思決定支援を、別々に放置せず並行して進めてください。

まとめ:後方支援病院に断られたときは対応能力と意向を確認する

私の経験では、意向を再確認して情報を追加しても、受入れにはつながりませんでした。

だからこそ、調整が進まない理由をMSWの説明や家族の態度だけに求めず、必要な医療と相手の体制を確認することを勧めます。

次の打診では、不足している情報と対応できない条件のどちらが課題なのかを整理し、上司や主治医と次の選択肢を検討してください。

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